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タッチ、音色、そして音響

タッチに関連した調整は行っていないはずなのに、「タッチが変わった」と感じたり、鍵盤重量は正常なはずなのに、「鍵盤が重く弾きづらい」または「軽くて弾きづらい」と感じる。

まだまだ駆け出しの頃は、こんな弾き手の感じ方によく戸惑ったものです。(ある意味、今現在も。)

「すべての調整はタッチに影響する」ということ。そして、「部屋の音響までもがタッチに影響する」ということ。(ピアノの置く位置によっても影響する。)

これを踏まえながら、限られた時間で弾き手に満足してもらえるよう仕事をするのが私達の仕事と言えます。

ここでいうタッチというのは、ピアノアクションの基準寸法(鍵盤の深さなど)の調整ではなく、弾き手の感じ方。ごくごく単純に弾いた感じのこと。音色音量も含めて思い通りに弾けたり、表現できたり、弾きやすさ、弾きづらさのこと。

『88鍵のタッチと音色を全て"完璧"に揃える』ことは可能でしょうか?

まず調律する。次に、アクションの約30項目に及ぶ調整を88鍵全てに施す(2500箇所)。そして、1鍵につき約15箇所の摩擦部分のトルクを揃える(1320箇所)。88鍵の鍵盤重量を揃える。そして、ハンマーフェルトの硬度分布を88鍵、全て揃える。これを1時間で?2時間で?出来るはずがありません。

たとえこれが出来たとしても、相手は「木材」。厳密に言うと、88鍵すべてが音色もパワーも伝播速度も違うのです。それでも私達はこの限られた時間で、概ね、喜んでいただけるまでの仕事はします。(でなければ今ごろ廃業。)

どうやって短時間でタッチを揃えるか?

ポイントを押さえながら、バラツキを取ってゆき、かつ、心地の良いタッチに仕上げていく。いかに要領よくポイントを押さえ、バラツキを見つけていき、調整していくか。この効率が良ければ良いほど、短時間で良い仕上がりになります。

部屋の音響とタッチの関係。よく調整されたピアノであっても、 狭い部屋で、気密性が高く、吸音率が低い部屋では弾きづらく感じることがある。特に低中音域の吸音が足りないと弾きにくいと感じる弾き手が多い。

そして部屋は狭ければ狭いほど、そう感じる傾向にあります。そういった部屋では逆にいくつかの方法でピアノのパワーを下げてやった方が、弾きやすく感じる傾向にあります。また、出来る限り吸音率を上げるような工夫をすると良いと思います。特に低~中音域。そして直接音が極端に大きく演奏者の耳に届く場合にも弾きにくく感じる方が多いようです。

ほとんど全ての楽器が箱(ボディ)の中で共鳴して音色が決まっていくように、部屋(ボディ)もひとつの楽器として見立てることができます。音響によって自分の耳に戻ってくる音色は大きく変化します。(同時にタッチも。)

ただ、これには住宅事情も絡んできますので限界があります。どこかで諦めなければなりません。ハンマーに手を入れての音色・音量の変更。もちろん可能ではあるし、日常の作業であります。そのピアノが持つ表現力を最大限に発揮できる、「ハンマーの良い状態の範囲」というのは意外に「狭い」ものです。

逆にいうと、演奏会ひとつ終了すると既にその範囲からはみ出てしまってばらついてしまう。 良い状態からはみ出てしまって、しかもばらついてしまう。= 音色のバラツキ = タッチのバラツキ = 思い通りの表現ができない = 弾きにくい ということになるわけです。

とりとめのない話になってしまいましたので、この辺でm(_ _)m

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