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調律師用チューナーの効用

コンピューターによるシュミレーション

時代はハイテク化が進み、我々調律師の世界でもコンピューターを導入する技術者が増えつつある。

これらを利用する事により、今まで出来なかったことが可能となる。

例えば、3オクターブの和音をある響きにしようと想定したとき、ある音域の2オクターブはこんな感じの響きになり、また、ある1オクターブはこんな感じの響きになる。そのためには、12の音階(ドレミファソラシド)はこんな風に割り振るとよい。

というふうに、コンピューターが調律前にシュミレーションしてくれるわけである。

インハーモニシティの存在

さて、いつも私達がピアノを調律するにあたり、数学のように割り切れない大きな2つの問題と格闘している。

ひとつは、現代の音階が (1) 十二平均律であるということ。もうひとつは、ピアノには (2) インハーモニシティが存在するということ。

(1)
十二平均律を簡単に説明すると、1オクターブを均等に12で割って音階を作る。この音階が十二平均律。この1オクターブを平均に12で分割するという作業が実際のところ容易ではない。様々な和音(5度、4度、3度など)を細かく聞き分けながら配置してゆく。すべてが均等になるように。

ひとつを修正すると、それは全部に影響するから他の多くの部分を配置しなおすという難作業になる。癖の強いピアノも多い。ピザやケーキをザクッと12等分する程度の軽作業なら嬉しいのだがそうはいかない。

私達はまず最初に、このように1オクターブを12等分する作業からスタートする。この作業に多くの技術者は10分前後の時間を費やす。 慣れているピアノなら多くは満足のいく結果になるのだが、後述するインハーモニシティの影響、癖の強いピアノ、条件によってなかなか上手く決まらないのが 現状。

(2)
次に、インハーモニシティを簡単に説明すると、1オクターブをピッタリ合わせて(「純正」と表現します。)、さらに上の、もう1オクターブを純正に合わせる。そうすると、いま合わせた2オクターブも純正になる…と思われるが実はそうはならない。これがインハーモニシティである。

この『インハーモニシティ値』というのがピアノによって異なるから、さらに事はやっかいになる。

どういうことかと言うと、2オクターブを純正に合わせたいと思うと、1オクターブについては多少の妥協が必要というわけである。そして、この妥協点がピアノによって異なるのである。

インハーモニシティ インハーモニシティ

この十二平均律とインハーモニシティのおかげで、「すべての和音が純正にはならない」。ある和音を理想的にすると、もう一方が理想的にならない。これがピアノ調律の世界である。

最初の1オクターブで全てが決まる

「1オクターブ、2オクターブ、3オクターブ、のどれもが綺麗に響くように。」
これは私の調律の優先順位の上位を占める。

そうしようとしたときに、最初の1オクターブをどのような響きにし、そのためにはこの1オクターブをどのように12等分すると良いのか?という問題に直面する。

最初の1オクターブが広すぎると、その上の2オクターブ、3オクターブはさらに広くなり過ぎるし、逆に、最初の1オクターブが狭すぎると、2オクターブ、3オクターブも狭くなり過ぎる。

ようするに、この最初に決める1オクターブはピアノの全音域に影響してくる。

しかし私達は、これらを経験によりかなり上手くやる。

ただ、大きくピッチを変更しなければならない時や、慣れないピアノだったり、調律中に室温が変化したり…と様々な問題が生じることが珍しくない。

修正しなおしたり、妥協したり、を繰り返しながら、なんとか時間内に完了させる。

ではコンピューターを駆使するとどうなるか?

「インハーモニシティ値」をコンピューターが計算してくれるから、予め「正確な妥協点、オクターブ、その他の和音の響き方、それを踏まえた十二平均律」を「全音域」に渡って計算してくれる。

調律前に結果がシュミレーションされ、取るべき方法を選択することができるのである。

これまでは、やってみないと結果がわからない、結果が悪ければやりなおし。時間がなければアウト。という部分が多かったが、これがなく なるのは嬉しい。ピアノ全体のバランスや仕上がりの状態を予め確認し、チョイスすることができるし、慣れないピアノ、癖の強いピアノ、これらに騙されることもない。

初めのうちは職人気質もあり、機械を使うことを馬鹿にしていた節もあるが、結果は格段に良好なので、活用しない理由は見当たらない。


【参考】

私が現在調律時に使用しているソフトウェア

・TuneLab
・Reyburn CyberTuner

ともにアメリカのソフト。TuneLabは英語マニュアルで日本語でのサポートはないが価格もリーズナブルで大変に使いやすい。私はこちらを中心に利用している。

Reyburn CyberTuner は日本語マニュアル&サポートがあるので導入は最も簡単、ユーザーも多い。

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